「コックニー」と呼ばれるのは生粋のどこの人のこと?

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「コックニー」と呼ばれるのは生粋のどこの人のこと?

  1. アテネ
  2. ロンドン
  3. パリ
  4. ローマ

【答え】 ロンドン

コックニー(Cockney)は、主にロンドン東部の労働者階級の人々が話す英語の方言、アクセント、そしてその話者を指す言葉です。特にその独特の発音と「ライミング・スラング(押韻俗語)」が有名です。

コックニーの定義

伝統的には、ロンドンのイーストエンドにあるセント・メアリー・ル・ボウ教会(St Mary-le-Bow)の鐘の音が聞こえる範囲内で生まれた人がコックニーであるとされています。しかし、現代では地域的な意味合いよりも、特定のアクセントや言語的特徴、そしてそれを話す人々(特に労働者階級)を指すことが多いです。

歴史的背景

コックニーという言葉は14世紀には既に存在し、「雄鶏の卵(cokeney)」に由来するとも言われています。18世紀から19世紀にかけての産業革命により、ロンドン東部に貧しい労働者が集中したことで、「コックニー=労働者階級の言葉」という認識が広まりました。

当初は「汚い言葉」とみなされることもありましたが、近年ではその独自性が評価され、ロンドン文化を象徴する一部として広く認識されています。映画『マイ・フェア・レディ』では、花売り娘のエリーザ・ドゥーリトルがコックニー訛りで話すシーンがあり、この方言が世界的に知られるきっかけの一つとなりました。

コックニーの言語的特徴

コックニーには、標準的なイギリス英語(RP:容認発音)とは異なる、非常に特徴的な発音や文法、語彙があります。

1. 発音(アクセント)

  • Hの脱落(H-dropping): 単語の冒頭の「h」の音が発音されないことがあります(例: “head” が “ed” に)。逆に不要な場所に”h”が付加されることもあります。
  • Tの発音の変化(Glottal stop): 単語の中の「t」の音が、声門破裂音(喉をつまらせるような音 [ʔ])に変わることがよくあります(例: “better” が “be-uh” のように)。
  • 「th」の発音の変化:
    • 無声の「th」[θ] が「f」[f] になる(例: “think” が “fink” に)。
    • 有声の「th」[ð] が「v」[v] になる(例: “the” が “ve” に、”father” が “fah-ver” に)。
  • Lの発音の変化(L-vocalisation): 単語の最後や子音の前にある「l」の音が母音のように変化したり、半母音化したりします(例: “little” が “li’o” のように)。
  • 二重母音の変化:
    • /eɪ/ (day) が /aɪ/ に(例: “day” が “dye” のように)。
    • /aɪ/ (my) が /ɔɪ/ に(例: “like” が “loyke” のように)。
    • /aʊ/ (town) が /æː/ に(例: “town” が “tan” のように)。
  • Rの発音の変化: /r/ の音が唇歯接近音 /ʋ/ になることがあります。また、単語と単語の間に本来存在しない「r」が挿入されることもあります(例: “America is” → “America-ris”)。

2. 文法・語彙

  • “ain’t” の使用: “am not”, “are not”, “is not”, “have not”, “has not” の短縮形として “ain’t” が頻繁に使われます。
  • “my” の代わりに “me”: “My throat hurts” が “Me throat hurts” のようになることがあります。
  • 付加疑問文: 常に “innit” を使用します。
  • ライミング・スラング(Rhyming Slang): コックニーの最も特徴的な語彙です。これは、特定の単語を、その単語と韻を踏む2つ以上の単語のフレーズに置き換え、さらにそのフレーズの最後の単語を省略して使うというものです。
    • 例:
      • “stairs”(階段) → “apples and pears”(リンゴと梨) → “apples” とだけ言う
        • 例: “I’ll run up the apples.” (階段を駆け上がるよ)
      • “look”(見る) → “butcher’s hook”(肉屋のフック) → “butcher’s” とだけ言う
        • 例: “Let me take a butcher’s!” (ちょっと見せて!)
      • “phone”(電話) → “dog and bone”(犬と骨) → “dog” とだけ言う
        • 例: “I tried to get her on the dog.” (彼女に電話しようとしたけど)
      • “wife”(妻) → “trouble and strife”(苦悩と争い) → “trouble” とだけ言う
        • 例: “My trouble’s complaining again.” (妻がまた文句を言っているよ)

ライミング・スラングは、元々は犯罪者や裏社会の人々が隠語として使っていたものが、次第に一般の労働者階級に広まったと言われています。これによって、仲間意識を表現したり、外部の人間には理解できない会話をしたりする役割がありました。

現代のコックニー

かつては特定の地域や階級に限られたものでしたが、近年ではロンドン市内全域や、他の地域でもコックニーの特徴が聞かれるようになってきています。また、メディアを通じて広く知られるようになり、必ずしも「汚い言葉」という認識ではなくなっています。しかし、依然としてRPとの違いは大きく、イギリス社会における地域性や階級性を示す重要な要素の一つです。

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